感ける(かまける)と云う言葉がある。
「一つのことに注意を奪われる」というのが一般的な解釈だが、他には「心が動く」や「感心する」と云った情緒的、或いは叙情的な意味も含まれている。
その情緒的で叙情的な意味合いの強い「感動」について、悲喜交交の「ポツンと一軒家」を鑑賞する度、一往深情の物語に心が奪われるのである。

一昨日放送の群馬県のポツンと一軒家にも感動させられた。
鬱然とした閑静な佇まいのなか、亡母設計のログハウス(ポスト・アンド・ビーム)に、伯母さんと暮らす56歳の女性が一人で切り盛りするペンションがある。
玄関の上には、「おやど遊房」と書かれた看板が見える。おそらくは元書道教室を営んでいたとの、伯母さんの揮毫かと思しき優雅な書体で書かれている。
その看板に導かれ、エントランスを抜けると見る者の心を一瞬にして和ませ、目に爽やかで華やぎの世界が広がっていた。

吹き抜けのオープンスペースの真ん中に、山吹やツツジ、オトコヨウゾメなどの樹木が存在感を誇り、出迎えてくれた。
1Fには和室、2Fが洋室の1日1組限定のログハウス風宿泊施設である。
オープンスペースの壁面には至る所に油絵(亡母の作品)が飾られ、アンティークのロッキングチェアーやランプシェードが中世の洋館を彷彿とさせる。2Fの洋室では、桜の季節になると寝具に横たわりながら満開の桜を鑑賞もできるそうだ。

当ペンションはリピーターが多いとのこと。
なかでも100回程宿泊する常連客もいるそうだ。年内の土日は全て予約で埋まっているそうである。
取材途中にも予約の電話が入るなど、人気の様子がうかがえる。
メモ帳ならぬ大きめのメモカレンダーで早速予約の確認とメモをしていたが、実は私も同じ様なことをしている。自宅と事務所の壁面に大き目のカレンダーを吊るし、予定表代わりメモをしている。そうすることによって予定が直ぐに確認できる。
但し、事務所にはメモしているが、自宅には未記載の時もあるなど、予定をど忘れすること暫しである。

余談はさておき、
「好店三年客を変えず、好客三年店を変えず」良い店は常連客を大切にし、良い客は店を取っ替え引っ替えしないものである。
リピーターが多いその理由は、閑静な自然環境や宿泊施設(1月~3月休業)の魅力もさることながら、オーナーの手料理にあるのではないだろうか。

1泊13,000円、ディナーは15品目の洋風懐石コース。
豚肉のテリーヌやサザエ入りのマッシュポテト、山女魚の塩焼きやギンヒカリ(群馬県名産のニジマス)のお刺し身、金目鯛のローストや上州和牛のヒレステーキなどなど、どれをとってもたまらなく美味しそうである。
ただ、リピーターが多い理由はそれだけではないようだ。
やはりなんといっても、一番の魅力はオーナー自身の人柄、その魅力にあるのではないだろうか。
母親が亡くなる前に、「娘のあんたと出会えたことが、私の一番の仕合わせなのよ」と言い残して天に召されたそうである。

最後に、「100%満足よ」とオーナーの今の心情を話していたことが実に印象的であった。
亡母の形見と云えるペンションで、伯母さんと暮らす今を精一杯、愚直に生きるその様、一往深情の物語りに心が奪われたのは云うまでもない。


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