昨年の12月9日、無事に国際宇宙ステーションから人工衛星「YODAKA」が宇宙空間に放出された。
そのYODAKAが地球を周回している途中、地上から短歌の上の句(7・5・7)と下の句(7・7)を別々に送信し、宇宙空間で上の句と下の句が結びつき、一首(三十一文字)を完成させると云った壮大なプロジェクトが、岩手県花巻市の県立花巻北高校の生徒らとの発案で計画が進められ、遂に先月その企画が現実のものとなった。
日本国内を初め世界から上の句413句が寄せられ、下の句は花巻北高校の生徒らが430句を発信。YODAKAを通じて307首の三十一文字が完成した。
云わば「連歌」が宇宙空間で実現されたことになる。
今から1000年程前、平泉近郊の衣川付近でも感動的な連歌が生まれた。
前九年の戦いの折、陸奥守兼鎮守府将軍・源 頼義の攻勢にひと先ず退却を余儀なくされた安倍 貞任(藤原 清衡公母方の伯父)に、後方から追いついた源 頼義の嫡男源 義家(八幡太郎 義家)が、弓に矢をつがえながら、「衣のたてはほころびにけり」と和歌の下の句を吟じると、安倍 貞任はすかさず振り向き、間髪入れずに「年を経し糸の乱れの苦しさに」と返した。
その当意即妙なる返歌に対し、深く感銘を受けたのだろう。つがえた矢をはずし、武勇の誉高い義家は追撃を断念したとの逸話が、『古今著聞集』に記されている。
それに匹敵するであろう連歌が、無限の宇宙空間のなかで生まれたのではないだろうか。
これらの企画は、昨年の9月、花巻北高と岩手医科大学、花巻市に本社を置く合同会社SPACE VALUEの3者が連携講座協定を結んだことから現実のものとなったようである。
岩手医大の施設での研究や同大教員らによる講義により、生徒らの進路の選択肢を広げる目的もあるようだ。実に素晴らしいことである。
花巻市はご周知のとおり、世界に誇る宮沢 賢治さんの生誕の地である。
また、メジャーリーグで大活躍の菊池 雄星選手や異次元の活躍を誇る大谷 翔平選手、更には今後が大いに楽しみな佐々木 麟太郎君の母校(花巻東高校)がある。
今後は世界、いや地球を超えた宇宙空間を舞台に活躍する人材が輩出されるのではないだろうか。
因みに、今回の短歌(連歌)企画に共感を得た私も、早速上の句を投稿させていただいた。
その結果、幸甚にも木下 龍也氏の選評にて佳作に選んでいただいたのだった。
上の句:初孫の笑顔が浮かぶアルタイル (菅藤 誠)
下の句:萬吸い込む星のカービィ (花巻北高3年生)
1席以下の入選作、その他の結果など>>
追記
追記
先日他界された佐藤怡當(いあつ)先生のご仏前に、お別れの挨拶をさせていただき、今しがた事務所に戻ってきた。
おそらく先生は、元県立高校の教諭(国語)だったことから、花巻北高の短歌プロジェクトは当然知っていたと思う。
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