「コンパクト」を辞書で引くと、「こじんまり、小さくまとまっているようす。また、鏡のついた平たくて小さいおしろいとバフの入れもの」とある。化粧用コンパクトは兎も角として、圧縮することやぎっしり詰めることを意味することばだが、最近、コンパクトシティなる用語が、あたかも性善説であるかのような広がりが巷では呟かれているようだ。
確かに、合理的ではある。
しかしながら、人それぞれの「価値観」や「思い」を無視するかのようなことが、必ずしも善と云えるのだろうか。
あるネットの記事に違和感を覚えずにはいられなかった。
先ず初めに、精神性云々について私なりの思索を展開してみたい。
そのタイトルは「ある役人は言った。『ポツンと一軒家』は面白いけど、美化しないで。コンパクト化へ求められる自治体の役割」とある。
石破首相の地方創生方針に対する懸念を述べた内容のようだ。
不動産屋が書いているようだが、知人の官僚がその意見を述べているのを代弁しているようである。
私は日曜日の夜は必ずと云っていいほど、テレビ番組の『ポツンと一軒家』を観て、いつも感動をもらってるだけに、憤りすら覚えた。
要は分散する地方を集約して、居住エリアのコンパクト化を説いている。言い方を変えれば、所謂地方切り捨ての論調であり、つまり「一軒二軒の少ない地域のインフラに税金を投入するのは無駄だから町中に引っ越せ」ということである。
能登の復興もそうだが、住み慣れた土地、地域の再興を目指すよりも、コンパクト化を念頭に置いた合理的な復興案が優先されている。
確かに、合理性の追求は、聞こえはいい。
しかしながら果たしてどうなのだろうか。不動産屋の立場としては確かに仕事を作る必要があろうことから、理解もできなくはない。
限られた予算のなかで、合理化を図り、削減しながら事業の展開を進め、利益を出さない限り会社としての存続は厳しい。
しかしながら国や地公体など、公的な立場にある人間が云うべきことではない。何故なら、公務員は国民全体の奉仕者であり、公正な職務を全うする必要があるからだ。
と云うことは、国民それぞれの「価値観」や「思い」を与する必要があり、無視するような行為は決して許されるものではない。
ポツンと一軒家に住むことを阻むことは、明らかにその人らの価値観や思いを否定し、踏みにじる行為だと云っても過言ではない。
では何故、コンパクト化を推し進めようとするのだろうか。
おそらくそこには財源問題が絡んでいるのだろう。「一軒二軒の為に道路を整備するのは税金の無駄遣いだ」「国民の血税を無駄にするな」と思っているからだろう。
そもそも、その財源論自体が旧態依然とした金本位制当時の発想であることを先ず指摘しておかなければならない。
「お金」を「物」として解釈しているから、誤った解釈であることに気付いていないのである。
先ず以て、その財政観、貨幣観を正さない限りは、日本の未来はないと云えるのではないだろうか。
以上は精神論などを述べたが、以後は現実的な問題について私なりに論じてみたい。
昨今、温暖化などで異常気象が続き、線状降水帯やゲリラ豪雨など、各地で甚大な被害を齎している。
河川の上流部でゲリラ豪雨などが発生した場合、どこかで水を止め、蓄えない限り下流部に向かって凄い勢いで流れ込み、土石流となって人家を襲うことになる。
勿論昔からあっただろうが、以前はポツンと一軒家などのように、山間地に住居を構えて田畑を耕していた。
当然田んぼは平面が基本であり、その周りを畦畔で囲っている。棚田のように山地間の水脈の受け皿となり、段々に水を溜めるダム湖の役割を担っている。勿論田んぼに水を供給するため池もそうだ。
上流部で大雨が降ったとしても、それらによって比較的流勢は緩和されることになる。
それだけではない。
最近熊の被害が相次いでいる。
2024年の全国熊出没情報は1万5741件。現行の調査となった2016年以降では過去最高とのこと。人身被害は198件にも及んでいる。
つまり、山間地や中山間地の耕作放棄地拡大に伴い、獣害の継続的被害の問題も孕んでいるのである。
また、それだけではない。
コンパクト化を進め、人口が都市部にばかり集中した場合、もしもの時はどうするのだろうか。
巨大地震などの天変地異による大災害により、一気に全滅する可能性だってある。
第二次世界大戦時に死亡した日本人の数は約310万人(軍人230万人)と云われているが、山間地を含め、地方に疎開した人数はおよそ45万人と云われている。
山間地や地方に疎開し、救われた人らがいないことには、日本の復興などなかったのではないだろうか。
いずれにしても、既述したように、財政観、貨幣観を正さない限りは、日本の明日はないと云うことに、一刻も早く気付いていただきたい。

まともなメディアは、やはりテレ東のみだったようだ。
真実を淡々と報道するテレ東に敬意を表する。これぞ真のジャーナリズムだ。

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