地元紙に、何やら面白そうで、しかも意味不明なタイトルに目が留まった。
「短歌ミッション機運醸成」云々。
なんのコッチャ?と読み進めていくと、「Falcon9」ロケットに搭載された人工衛星「YODAKA」が地球を周回の折、地上から短歌の上の句(5・7・5)と下の句(7・7)を別々に送信し、銀河系の宇宙空間で偶然なる組み合わせによって一首の短歌(連歌)を完成させる。
と云った稀有にして壮大な試みとのこと。

その慧敏なる企画立案は岩手県立花巻北高校の生徒とのことである。
花巻北高校と云えば、日本から世界に羽ばたき、いや、宇宙にまでその名声を轟かせた、かの大谷翔平選手の母校(花巻東高校)や、『銀河鉄道の夜』『雨ニモマケズ』などの作者で、文学の入口を歌作に求めた宮沢賢治さんの生家も同じ市内にある。

人工衛星YODAKAは、今年の12月上旬に国際宇宙ステーションから宇宙空間に放出され、来年の1月には短歌を通信するミッションを開始。翌月の2月に出来上がった短歌が発表されるとのことである。
奈良時代から脈々と受け継がれ、歌作されてきた日本独特の短詩形文学の三十一文字(和歌・短歌)が、日本、いや地球を飛び越え、宇宙に飛び立つ時が遂にやってきたのである。
一首を完成させる方法として、既述したように上の句と下の句を別々に送信するとの試みだが、下の句は今回のプロジェクトを考案した花巻北高校の生徒らが担当し、上の句を全国から募集するとのこと。
応募サイト

つまりは連歌方式によるものだが、「連歌」と云えば、真っ先に思い浮かぶのが「前九年の役」での安倍貞任と源義家との問答を思い浮かべる。
平安時代中期、奥六郡を支配していた安倍頼時の次男、安倍氏の棟梁として武勇を誇った安倍貞任が、前九年の役の折、態勢不利と判断し衣川柵を後にした際、追ってきた源義家(八幡太郎義家)が矢を貞任の背に向けながら、下の句「衣のたてはほころびにけり」と詠んだ。

それに対して貞任は「年を経し糸の乱れの苦しさに」と上の句を透かさず返したそうである。
この連歌の問答に、安倍貞任を野蛮で粗野な人物だと思っていた源義家は、当意即妙なる歌才に感動し、矢を収めて引き返したとの逸話が残っている。
当時の朝廷側では、みちのく人を蝦夷と蔑んでいたようだが、独自の文化を持ち、武骨であっても教養を深めていたことを物語る逸話である。
その「みちのくびと」を祖に持つ高校生らのプロジェクトが、今、銀河の宇宙に羽ばたこうとしている。


追記
この度、我が家のご本家(伊藤達朗さん)が、第77回岩手日報文化賞の名誉にあずかりました。
親類一同を代表し、先ず以て、衷心よりお祝い申し上げます。


azaminohana

岩手の韻律