春は山菜、秋は茸と、食の悦びと共に採取の楽しみを毎年心待ちにしている。
山菜はノビルの酢味噌和え、コゴミのマヨネーズ和え、タラの芽の天ぷらやワラビの御浸し、ゼンマイの煮物などなど、どれも捨てがたいが、私は特にゼンマイの料理が大好きである。
ただ、それと双璧をなすのがミヅ(ミズ)の酢味噌和えだと私は思っている。

幸いにも我が家の裏山にはミヅが無数に生えている。先祖の誰かが植えたものだと思われるが、杉林一面に広がっている。
その為季節になれば直ぐにでも調理ができ、茎のみならず葉っぱも味噌汁の具に使うなど、捨てるところがない。
最近はサッと湯がいたミヅの茎を、市販の「浅漬けのたれ」に一晩漬け置きし、漬物としてご飯のお供にしている。しかしながらやはり、味噌和えには叶わない。

そのミヅのことが、地元紙面(岩手日日)に「高村光太郎の散文にでている」と紹介された。
それによると、光太郎が好んで食べたミヅの調理方法が記されている。
「ミヅの御浸しや塩漬け、汁の実にして食べるとワラビのようなぬめりがあって歯切れがよく、味に癖がなくてさっぱりしている。ミヅのぬめりとニシンの脂とがよく調和する」などと記されている。
現在、それら光太郎直筆の散文原稿が花巻市太田の高村光太郎記念館で初公開とのこと。

春の一大労苦、いや、行事であるお田植えが無事に終わり、多少心に余裕が出来てきたことから、花巻市の高村光太郎記念館を訪れてみたい。
以前訪れた時はコロナ禍もあり、記念館や高村山荘は休館中とあって入れなかった。
光太郎直筆の散文はもとより、7年の歳月を慎ましやかに独居自炊生活を送った高村山荘の中をこの目で見てみたい。


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