先月天に召された叔母の墓前に、姉である私の母が、「花をそむけたいからお墓に連れてってくれないか」との頼みに、杖なしでは歩けぬ膝の痛みや、心臓に持病を抱える身を思えば、「かなりの急勾配である墓道を渡渉するのは無理だ」と諭したものの、「どうしても連れてってくれ」との懇願に、止む無く承諾する事となった。

叔母が他界する一週間前に、一緒に蕎麦を食べに行く約束をしていたとのことで、その約束の日とは他界した翌日だったそうだ。
さぞ無念であったに違いない。

差し出す私の手を、「必要ない」と振り払い、両手に杖を持ち、一歩づつ一歩づつ石段を登っていった。
お墓近くの石段の横には、ひっそりと佇む老木の山桜が、姉の墓参を喜ぶかのように満開に咲いていた。


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