事務所近くのお婆さんが亡くなった。
物腰が柔らかく、何時もにこやかでとても優しいお婆さんだった。
自宅周りの側溝の掃除なども、丸くなった背中で苦しかろうに、無理を押しながらやっていた。
「お婆さん、無理は禁物だよ」と声をかけると、「ハイハイ、有難うね」とにこやかに返事が返ってきたものだ。
最近あまり見かけなくなったと思っていたが・・・。

何となく私の祖母(故)に雰囲気が似ていて、親近感を覚えていたのだが非常に残念である。

私が短歌に興味を持ちだしたのは高校生の頃だった。
勿論本格的に詠んだ訳ではなく、ごくたまに、思い出した時だけノートに書き留める程度だった。
未だにそうだが、拙い歌しか詠めず、才能のなさは如何ともし難い。
しかしながら今読み返してみると、その頃に詠んだ歌の方が素直で良い感じがする。その時の心情や景色がストレートに伝わってくるようだ。

そもそもこの歌詠みは祖母の影響であった。
岩手の片田舎出身でありながらも、浅草の女学校を出ており、実兄は夭逝したものの福沢諭吉の愛弟子の一人であった。
その祖母が、女学校当時から親しんだのがこの短歌だった。
歌壇に投稿する事もなく、ただただひっそりと、家事の合間を縫い、楽しみの一つとして詠んでいたようだ。

その祖母が偲ばれてしょうがない。


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